2019年09月


「練馬総合運動場公園オープニングフェスティバルに参加しました(後編)」
~パラ陸上の西勇輝選手にインタビュー~
前回に続き、平成31年3月31日に練馬総合運動場公園オープニングフェスティバルの様子をお伝えします。後編となる今回は「陸上トラック走り初め」や「ランニング(短距離)教室」についてレポートします。また、パラ陸上の西勇輝選手がインタビューに応じて下さいました。車いす陸上の魅力を熱く語ってくれました!
西勇輝選手 プロフィール

- 西 勇輝(にし ゆうき)
- 1994年2月14日 東京都生まれ
- 小学校5年生から車いす陸上を始める
- 2013年アジアユースパラゲームズで日本選手団主将を務める。同大会において100メートル、200メートル、400メートルで金メダルを獲得
- 2016年3月 アジアオセアニア選手権400メートルで優勝
- 2016年4月 野村不動産パートナーズ(株)に入社
- 2017年7月 世界選手権に出場、200メートルで8位入賞
練馬総合運動場公園は、練馬区で初めての公認陸上競技場を備えた公園として開園しました。本イベントは、「東京2020オリンピック・パラリンピック500日前」と「ラグビーワールドカップ2019日本大会6か月前」を記念して陸上競技やラグビーの選手をゲストにお迎えして行われました。
陸上トラック走り初め

箱根駅伝優勝者として知られる碓井哲雄氏や北京2008大会400mリレー銀メダリストの朝原宣治氏、西勇輝選手をお招きし、小学生とゲストアスリートによる走り初めが行われました。小学校高学年のクラスではパラ陸上の西選手も参加され、そのスピードの速さに会場全体が息をのみ、一拍おいて拍手の渦が沸き上がりました。朝原氏も「とても走りやすい」と絶賛のうえ快走を披露してくれました。
ランニング(短距離)教室

100mレーンを開放し、朝原氏を中心としたランニング教室が行われました。小学校低学年を中心としたクラスと、小学校高学年と中学生を中心としたクラスに分かれ、手足を使った色々な動きを体験し、短距離走の基本を学びました。最初は広いグラウンドで落ち着かない様子だった子どもも、真剣な表情に変わりました。これまで体験したことのない動きに戸惑いながらも、体を動かすことを心地よく感じているようでした。時折見られるコーチの走りには、目を見張るものがありました。参加した子どもたちが多くの声援を受け、頑張っている姿がとても印象的でした。
パラリンピック競技用車いす体験会
西選手による競技用車いす体験会が行われました。体験会場にはデモンストレーションで西選手の走りを見て、体験をしたいという子どもや大人が数多く集まりました。体験したいという気持ちと、本当に乗れるかという不安が入り混じった複雑な表情の子どもたちも見受けられました。西選手は車いすを簡単に方向転換し、自由に操っていました。子どもたちも同じ動きにチャレンジするのですが、実際に車いすに乗ってみると中々上手く操作できないようでした。練習を重ねることで車いす操作が上達した子どもたちからは笑顔があふれて満足そうでした。
パラ陸上西勇輝選手にインタビュー
2020年のパラリンピック出場を目指す西選手が忙しいスケジュールのなかインタビューに応じてくださいました。
(1)オリンピック・パラリンピックが東京で開催されることの意義について教えてください。

スポーツ競技の一選手として、オリンピック・パラリンピックが自国で開催されることは多くの方々や他競技の選手に見てもらえるチャンスだと思います。パラ陸上という競技をアピールし、試合を見てもらい知ってもらうことが自分の使命だと思っています。まだまだ障害者スポーツとして見られることが多いのですが、競技としてのスポーツ、またスポーツの面白さ楽しさであるエンターテイメント性をもっとアピールできたらと思っています。そういうレースをお見せしていきたいです。
(2)パラ陸上の魅力を教えて下さい。
車いす競技は比較的スタートが緩やかですが、一度加速するとスピードに乗って後半の速さの伸びや加速後の持続したスピードに迫力があります。車いす競技を始めるきっかけになったのもそのスピードに魅力を感じたからです。100m~400mの競技ではレーンが決まっていますが、800m以上はオープンレーンとなっていますので駆け引きでクラッシュが起きたりしますが、それもまた車いす競技の魅力の一つです。
(3)東京2020オリンピック・パラリンピックがどのような大会であってほしいと思いますか。

競技者としては、障害者のスポーツとして見られるのではなく、子どもたちが将来の夢、目標になる一人のアスリートを目指しています。東京2020オリンピック・パラリンピックを見た人にとって、障害者という概念が変わるような大会になれば良いと思っています。
(4)中学生、高校生に向けたメッセージをお願いします。
小さい頃はプロ野球が好きでスポーツ選手に憧れを持っていました。スポーツが好きだったからこそ、今の競技に出会えたのだと思っています。決してあきらめず、夢や目標を持っていれば、おのずとその先が見えてくると思います。若い皆さんには夢と目標を持って頑張ってほしいです。

西選手が出場するT54の選手は腰から上が機能します。このクラスは選手層が厚く激戦が予想されます。子どもたちにとって将来の目標となるアスリートを目指す西選手の活躍を応援していきたいと思います。
※T54は障害者の陸上競技において、クラス分けを表す記号です。「T」は走競技・跳躍競技を、「5」は脚長差、切断、関節可動域制限等の障害の種類を表しています。最後の「4」は障害の程度を示しています。障害の程度は0~9に分類され、番号が小さいほど障害の程度が重いことを意味しています。
前回の記事でご紹介したラグビーの菊谷崇氏も今回の西勇輝選手もお忙しいなか快く取材に応じてくださいました。プレーするだけではなく、競技を広めることにも尽力されるアスリートの方々に深く感謝し、これからも東京2020大会に向けた情報を発信していきたいと思います。