東京2020:調べてみました!

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調べてみました!
このページでは、より深くオリンピック・パラリンピックのことを知ってもらえるような記事をお届けします。読んだら大会をもっと楽しめるはず♪ どうぞお楽しみに!

「ハンドスタンプアートプロジェクトに参加しました」

 平成30年12月12日に練馬区役所1階において「ハンドスタンプアートプロジェクト」が開催されました。ハンドスタンプアートプロジェクトはハンドスタンプ(手形)を通して東京2020オリンピック・パラリンピックを応援する取組です。

 今回はそのブースを取材させていただくとともに、プロジェクトの代表者である横山万里子氏に会場でインタビューさせてもらいました。ハンドスタンプアートプロジェクトの様子とプロジェクトに込められた想いをぜひお読みください。


■ハンドスタンプアートプロジェクト概要

 ハンドスタンプアートプロジェクトは病気や障がいを抱える子どもたちとその子どもたちを応援する人たちの手形や足形を集めて世界一大きな絵を描くことを目指すプロジェクトとして平成26年に発足しました。平成30年12月現在で52,000枚以上のハンドスタンプが集まっています。このプロジェクトは一般社団法人HAND STAMP ART PROJECT によって行われており、個人のほか、学校や企業などの団体も多数参加しています。練馬区ではハンドスタンプアートプロジェクトを支援しています。プロジェクトの詳細につきましては、公式ホームページをご覧ください。(http://handstampart.com/)


■横山万里子氏インタビュー

 一般社団法人HAND STAMP ART PROJECT 代表の横山万里子氏が会場運営でお忙しいなかインタビューに応じてくださいました。

①ハンドスタンプアートプロジェクトを始めたきっかけを教えてください。

 このプロジェクトは2014年にスタートしました。私の息子は重度の障がいを抱えて生まれ、5年前に亡くなりました。2020年のパラリンピックが決まった時に障がいを持った子どものお母さんたちと色々な話をしました。最初はパラリンピックがとても遠い存在に感じていました。自分たちの子どもが選手としてパラリンピックに出場するのは難しいかもしれませんが、他の楽しみ方があると考えました。重度の障がいを持った子どもたちも誰かにサポートしてもらえば手形が押せる、参加できると思いました。みんなで楽しみながらオリンピック・パラリンピックに参加しようというところからプロジェクトが始まりました。

②パラリンピックが日本で開催されることにどのような意味があるとお考えですか。

 パラリンピックは競技として凄いだけでなく、優れた選手もたくさん活躍しています。しかし、それをスポーツとして見る機会や楽しむ機会が少ないと思います。選手と触れあえる機会が限られると、障がいを持っているからスポーツは無理だという考えから抜け出せません。パラリンピックの選手が活躍するところを見れば、自分たちにもできると思う子どもたちも増えていくと思います。この活動を通してパラスポーツの選手とお会いする機会が増え、子どもたちも選手と触れあうことで競技を応援するようになってきました。障がいを持った人たちのプレーを見ることで、自分たちにも目標ができるという意義は大きいと思います。

 大きなことはできませんが、手形を通して参加することでパラリンピックを身近に感じることが大切だと思います。そこからみんながパラリンピックのことを知り、サポートしていく環境が増えていくのだと思います。

③東京2020オリンピック・パラリンピックがどのような大会であってほしいと思いますか。

 一枚一枚は小さなハンドスタンプですが、たくさん集まれば大きな絵を描くことができます。小さな力を集めていきたいと思っていますが、2020年がそのピークになると思います。ピークの後は力の集まり方が下がると予想されますが、下がるだけではなく新しい枝が伸びていくという部分も必ずあると思います。ハンドスタンプアートについて言えば、参加してもらうことで色々な障がいを持った子どもたちがたくさんいることを知ってもらうきっかけにもなります。そこから本当の意味での共生社会が生まれてくるのではないでしょうか。オリンピック・パラリンピックにはその大きなきっかけとなってもらいたいと考えています。

④練馬区でのハンドスタンプアートプロジェクトの実施をどのように考えていますか。

 このプロジェクトを始めた時には出展を断られることも多く、月に20枚しか集まらないこともありました。練馬区では区長をはじめ、オリンピック・パラリンピック担当課や障害者施策推進課の皆様がどうすれば成功するかを親身になって考えてくれます。練馬区という自治体が後援してくださることで、初めての方も安心して参加できると思います。自治体による支援が練馬区から23区全体に、そして東京都へと広がってほしいと考えています。

 このプロジェクトはたくさんの方に支えられています。障がいを持った子どもたちは生活しにくいこともありますが、このプロジェクトを通して支えてくれる方がたくさんいることも分かってもらえると思います。生活の中で助けてもらえないと感じるケースもあるかもしれません。それは助けないのではなく助け方が分からないだけで、サポートしたいと思っている人がたくさんいるということが伝わればと思っています。

⑤中学生や高校生などの若い世代に知ってもらいたいことはありますか。

 私自身、息子が生まれるまでは福祉に特別の関心を抱いていたわけではありません。若い人たちも何をしていいか分からないのではないでしょうか。電車の中で席を譲るという行為一つをとっても、考えているより難しいことだと思います。実際に席を譲ることができなくても、譲りたいと思う気持ちを持てることが大切です。自分がこうしたいと思うことを素直に発信できるようになってほしいと思います。ハンドスタンプを押すことも席を譲ることも同じ気持ちから発しているのではないでしょうか。

⑥プロジェクトの今後の展開をどのようにお考えですか。

 このプロジェクトにはゼロ歳でも参加できます。まずは参加してもらうことが大事だと思います。そこから障がいのある人とない人が触れあえる場を増やしていきたいと思います。大人でも障がいを持った子どもたちにどう接したらよいか分からないことがあります。名前を聞くだけでも、子どもではなくお母さんに話しかけてしまうのを見かけます。障がいを持った子どもたちとも個として接してほしいと思います。そのためには、同じ場所で一緒に過ごす時間が必要です。このプロジェクトだけでなく、障がいを持った方も健常者の方も一緒に集まれる場所がこれから増えてくれればと思います。そのような場で触れあうことを繰り返していくことが大切です。言葉でどれだけ説明するよりも、実際に子どもたちと5分でも触れあうことの方が多くのことが伝わると思います。


 「生きているということはそれだけで十分に素晴らしい」と語る横山氏の言葉からは、子どもたちを見守る温かい気持ちが伝わってきました。


■練馬区役所でのハンドスタンプアートプロジェクトの様子

 この日、プロジェクトのブースは練馬区役所1階の入り口を入ってすぐの場所に設置されていました。区役所を訪れた方の目にとまりやすく、取材の間も利用者や職員がプロジェクトに参加されていました。

 ハンドスタンプに使われている染料は口紅に使用されているものと同じ成分でできています。口に入っても安全なうえ、水拭きでも簡単に洗い落とすことができます。好きな色を選んだら、手のひら全体に万遍なく染料を塗り付けます。次に画用紙に手のひらを押さえつけるようにして、しっかりとスタンプします。スタンプの中心部分にメッセージや名前を記入することもできます。完成したスタンプはブースに展示され、ブースの裏側にも飾られるほどたくさんのスタンプが集まっていました。

 参加者からは「簡単でとても楽しかった」「参加できて良かった」との声が聞かれました。ハンドスタンプアートプロジェクトはこれからも色々な会場での開催が予定されています。区内での開催予定は区のホームページでご確認ください。プロジェクトを通じて東京2020オリンピック・パラリンピックにぜひご参加ください。


たくさんのスタンプから大きなモザイクアートができあがるように、これからも応援していきたいと思います!

関連文献

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    『親子で楽しむ手形アート カンタン、かわいい!』
    やまざきさちえ/著 日本文芸社 2016年
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