東京2020:調べてみました!

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調べてみました!
このページでは、より深くオリンピック・パラリンピックのことを知ってもらえるような記事をお届けします。読んだら大会をもっと楽しめるはず♪ どうぞお楽しみに!

「オリンピック・パラリンピック史上初!! メダルプロジェクト」

 平昌2018大会のスピードスケート「女子500メートル」で金メダリストの小平奈緒選手と銀メダリストの李相花選手が健闘を称えあっている姿は記憶に新しいところです。今回はオリンピック・パラリンピック競技大会のメダリストに贈られる入賞メダルについて、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて進行中のメダルプロジェクトをリポートします。ぜひお読みください!



・メダルヒストリー

 最初に、入賞メダルの歴史を少しご紹介したいと思います。近代オリンピックの第1回大会となるアテネ1896大会では各競技の1位の選手に「銀メダル」とオリーブで編んだ冠が贈られました。1位の選手が「銀メダリスト」だったのです。ちなみに、2位の選手には銅メダルと月桂樹の冠が贈呈されました。1位から3位の選手にメダルが贈られるようになったのは第2回のパリ1900大会からです。しかもこの大会での入賞メダルは史上唯一の四角いメダルでした。また、メダルと言えば首からかけるものと思いがちですが、首かけ式は第3回のセントルイス1904大会で初登場したものの、その後の大会では採用されませんでした。首かけ式が復活したのは56年後のローマ1960大会で、この大会以降に定着しました。


出典:『楽しい調べ学習シリーズ オリンピックまるわかり事典』

   『感動のドラマの記録 オリンピック絵事典』『オリンピック雑学150連発』

   『JOA オリンピック小事典』


様々な歴史を経て現在の様式が定着してきたのです。それでは、新たな歴史を作ろうとしている東京2020大会のメダルプロジェクトを見ていきましょう。

・小型家電製品の再資源化


 ▲南大泉図書館に
 設置された小型家電回収ボックス

 練馬区内で右の写真のような小型家電回収ボックスを見かけたことはありませんか?平成23年から小型家電製品に含まれている金、銀、銅、パラジウム等の有用金属を再資源化するために区内16か所に設置されている回収ボックスです。この回収ボックスは練馬区立図書館でも4館に置かれています。小型家電製品には様々な有用金属が含まれており、「都市鉱山」と呼ばれています。小型家電回収ボックスは都市鉱山に着目しリサイクルするとともにごみの減量化にも寄与しているのです。





・都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト



 東京2020大会では入賞メダルの製作に小型家電製品に含まれる有用金属を活用する「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」(以下、「メダルプロジェクト」という。)が開始されました。練馬区も平成29年4月からメダルプロジェクトに参加しています。

 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、「組織委員会」という。)のホームページ(https://tokyo2020.org/jp/)によると、東京2020大会でメダリストに授与される金・銀・銅メダルはおよそ5,000個になります。組織委員会は、携帯電話をはじめとする小型家電製品に含まれる有用金属を活用して、全メダルの原材料を調達し、リサイクル率100%の入賞メダルの作成を目指しています。朝日新聞平成28年6月15日夕刊には、リオデジャネイロ2016大会では銀メダルと銅メダルの30%にリサイクル素材が使用されたことが紹介されています。しかし、回収した小型家電製品を活用し、リサイクル率100%でメダル製作を行うのはオリンピック・パラリンピック史上はじめての試みとなります。 練馬区でも啓発チラシ(右図参照)を作成し、携帯電話やスマートフォンの回収を呼びかけています。



それでは、練馬区内で「メダルプロジェクト」に参加できる場所を紹介したいと思います。



・練馬区内の回収場所

 練馬区では区役所本庁舎1階をはじめとして16か所の区立施設に小型家電回収ボックスを設置しています。回収場所の詳細やこれまでの回収量などは練馬区公式ホームページ (http://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/gomi/wakekata/kogatakaden9.html)を参照してください。



 ▲練馬郵便局の回収ボックス 

また、常設している小型家電回収ボックスに加え、光が丘体育館など7か所に右の写真のような臨時回収ボックスを設置してメダルプロジェクトの推進に力を入れています。臨時回収ボックスは携帯電話とスマートフォンのみが回収の対象となっており、平成31年3月31日まで設置されます。さらに、練馬郵便局など区内10か所の郵便局にもメダル専用の回収ボックスが設置されています。



 回収された小型家電は破砕処理された後で、金属の種類ごとにインゴットと呼ばれる塊に精錬されます。このインゴットが組織委員会に手渡され入賞メダルへと姿を変えていきます。どんなメダルになるのか楽しみです。


東京都の施設でもこのプロジェクトに参加することができます。そのいくつかをご紹介しましょう。

・東京都庁などの回収場所

 東京都庁第一本庁舎には「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」専用の回収コーナーが設置されています。東京都立足立工業高等学校が製作した「メダル協力ボックス」には回収数が表示されるようになっています。撮影を行った平成30年3月1日時点では「90,442」個でしたが、5月2日には「都庁舎での携帯電話等受付10万個突破記念セレモニー」が開催されています。2か月で10,000個ほどもの提供があったことになります。また、このコーナーでは携帯電話(スマートフォンを除く)に穴を開けて操作できないようにしてから投入できるように穴開け機も利用できます。


▲東京都庁の回収コーナー


 ▲都営地下鉄新宿駅の回収ボックス 

この他、都営地下鉄新宿駅の定期券発売所や東京体育館、東京武道館などにも専用の回収ボックスが設置されています。東京都庁や都営地下鉄などの都有施設における回収の詳細は東京都オリンピック・パラリンピック準備局のホームページ (http://www.2020 games.metro.tokyo.jp)をご覧ください。


回収した有用金属をもとに東京2020大会のメダルが製作されるわけですが、メダル製作には守らなければならないルールがあります。そのルールを見てみたいと思います。

・オリンピック憲章にみるメダル規定

 財団法人日本オリンピック委員会のホームページ(https://www.joc.or.jp)上では歴代のオリンピック憲章を見ることができます。最新のオリンピック憲章(平成29年9月15日から有効)には「メダルと賞状の仕様とデザインは、IOCに事前に提出し、承認を得なければならない」と記されています。また、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のホームページにはこのIOC(国際オリンピック委員会)によるオリンピック・パラリンピックメダル製作の規定が紹介されています。IOCの規定によると、メダルは直径70mm~120mm、厚さ3mm~10mm、重さ500g~800gで、原材料として「1位、2位のメダルは銀製で、少なくとも純度1000分の925であるもの」「1位のメダルは少なくとも6グラムの純金で金張り」等の条件を満たす必要があります。この他にも「原則として、丸形」という規定もあり、メダルの歴史でご紹介した四角いメダルは貴重な例外となるようです。



 最後に、金メダルを作るために必要な「純金」の量を計算してみましょう。約5,000個の入賞メダルのうち金メダルは1/3の1,666個、1個あたりに必要な最低量の6グラムで算出すると、1,666個×6g=9,996gとなります。9,996グラムですから約10キロもの「純金」が必要となります。金以外にも銀や銅が必要となるので、そのすべてをリサイクルで賄おうとする「メダルプロジェクト」の目指す目標がいかに高いかわかります。オリンピック・パラリンピック史上初の試みが成功するようこれからも応援していきたいと思います。



関連文献

  • この本をさがす
    『オリンピック雑学150連発』
    満薗文博/著 文藝春秋 2012.7
  • この本をさがす
    『オリンピックまるわかり事典』
    PHP研究所/編 PHP研究所 2014.3
  • この本をさがす
    『オリンピック絵事典』
    PHP研究所/編 PHP研究所 2004.6
  • この本をさがす
    『JOA オリンピック小辞典』
    日本オリンピック・アカデミー/編著 東京メディアパル 2016.6
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