東京2020:調べてみました!

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調べてみました!
このページでは、より深くオリンピック・パラリンピックのことを知ってもらえるような記事をお届けします。読んだら大会をもっと楽しめるはず♪ どうぞお楽しみに!

「パラバドミントンの豊田まみ子選手、渡辺敦也選手 講演会レポート(後編)」



 平成29年12月19日に練馬区立大泉第二中学校においてオリンピック・パラリンピック教育の講演会が行われました。今回の講師はパラバドミントンの豊田まみ子選手と渡辺敦也選手のお二人です。日本を代表するお二方の魅力あふれる講演会の様子を取材させていただきました。今回は後編として、講演会のあとに行われた質疑応答、インタビューの模様をお届けします。質疑応答では、生徒からの質問に真摯にそしてユーモアを持って回答して下さいました。ぜひ、お読みください!


講演会や白熱のバドミントン体験をレポートした 「前編」はバックナンバーからお読みいただけます。


前編でご紹介したテンポの良い講演で場が和んだところで両選手との質疑応答が行われました。

■質疑応答


・お二人にお聞きします。辛いときに聞くと元気が出る曲を教えてください。


豊田選手

 私は去年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックのテーマソングで安室奈美恵さんの「ヒーロー」という曲が好きです。この曲を聴くと頑張ろうという気になり、元気がでます。

渡辺選手

 自分はこの曲とは決まっていません。某動画サイトに「元気のでる曲」と打ち込んで最初に出てきたものを聞きます(笑)。

・お二人にお聞きします。今までで一番心に残っている言葉は何ですか。


渡辺選手

 座右の銘なのですが、「根拠のない自信を持て、それを裏付けるための努力をしろ」です。誰が言ったかわかりませんが、この言葉が自分の中にあり、パラバドミントンをやるうえでも大事にしています。

豊田選手

 私は「努力は才能を超える」という言葉が好きです。これは私が高校生の時の顧問の先生に言われた言葉です。学校が強豪校だったこともあり、ほとんどレギュラーででることができませんでした。しかし、メンバーに選ばれない選手でもたくさん練習すれば、エースにも勝つこともできるということを聞きました。その言葉が今でも自分を支えてくれています。

・お二人にお聞きします。試合中のモチベーションをどうやってあげていますか


豊田選手

 私はアイスとか甘いものが大好きなんですが、試合があると甘いものを一切食べないで我慢します。辛い試合を乗り切って大好きなアイスを食べるんだ!という気持ちでテンションをあげてます。

渡辺選手

 最初の質問(元気が出る曲)と同じで某動画サイトで「モチベーションが上がる曲」を探します(笑)。あと、闘志を出すために声を大きく出したりします。

・お二人にお聞きします。 練習で一番頑張っていることはなんですか


渡辺選手

 技術的なことになりますが、自分は車いす操作、「チェアーワーク」を主に練習しています。コートの中をできるだけ速く移動できるように練習しています。

豊田選手

 私はフィジカル面が弱いので、先ほど紹介したトレーニング用の義手を使うなどして筋力アップするようにしています。ここにいるヨネックスの島田選手は去年まで現役で一緒に練習させてもらったのですが、何度も「もっと食べなきゃ」とか「もっと大きくなれ」と言われてました。そういう風に言われないように、ごつい女になろうと思っています(笑)。

・豊田選手にお聞きします。練習が辛いときにどんな気分転換をしますか


 ゆっくり休みます。寝るのがすごく好きなので、とりあえず、寝ます。そして気持ちを切り替えています。あとお出かけしたり、今日のように少し違うことをするなどして気分転換をしています。

・豊田選手にお聞きします。左ひじの先があたると痛そうなのですが、サポーターなどの使用は禁止なのですか


 サポーターは禁止ではないと思いますが、試合中は暑いのと邪魔になるので使用していません。ちなみに、義手は使用禁止となっています。私はサーブするときにも左腕をかなり使うのでサポーターはしないで、痛いときにはそれに耐えます。


・豊田選手にお聞きします。アスリートとして普段気を付けていることを教えてください


 やはり栄養や食事に気を付けていて、栄養士さんについてもらっています。フィジカル面が弱いといいましたが、フィジカルを強くするためにはまず食事をしっかりとることが大事だと思います。試合の時はもちろんですが、練習の前後の食事もしっかりととるように心がけています。


・豊田選手にお聞きします。辛いときに自分を支えてくれたものは何ですか


 両親や応援してくださる会社の人たちです。応援してくれる人がいるという思いを常に強く思っています。そういう人たちに勝って喜ぶ姿を見せたいと思っています。その人たちの存在が私を支えてくれていると思います。

・渡辺選手にお聞きします。バドミントンを始めたきっかけを教えてください。


 小学校まで文科系のクラブだったのですが、中学校に上がったらスポーツをやろうと思っていました。小学校のころはバドミントンって女の子のスポーツっていうイメージが強かったのですが、中学校の入学式などで先輩方のプレーを見て、格好いいなと思いました。仮入部してみると、あまり練習していない部で、「これ、いけるんじゃね」と思いました。それがきっかけです。それから高校3年生まで競技として続け、そこで事故にあい車いすになりました。入院が長かったのですが、社会復帰しようとしたときに地元の障がい者バドミントンチームでやってみようと体験してみたのが今のパラバドミントンに繋がっています。

・お二人にお聞きします。プレーするうえで一番大変なことは何ですか


渡辺選手

 今年、タイの大会に出場したのですが、非常に暑かったです。自分の障害は火傷がもとになっています。その箇所の温度調整が難しくなっています。それでなくてもバドミントンは激しいスポーツなので。


豊田選手

 左腕が右より短いのでトレーナーさんに体の左右差があるといわれました。左右差というのは左と右の筋力だったり、バランスが違うということです。腕だけではなく、足にも左右差がすごくありました。例えば、右は20キロ持てるのに、左は10キロしか持てないというような大きな差がありました。この左右差はプレーにも影響し、重心が片方によっていたことで怪我をしてしまいました。怪我しないためにも左右差をなくすことに気を付けながらプレーしています。

・お二人にお聞きします。パラスポーツを通じて伝えたいことはありますか


渡辺選手

 一番は、車いすに乗っていても先ほどのようなプレー、パフォーマンスができるということを見て、感じて、伝えていきたいと思っています。

豊田選手

 私も渡辺選手と似ているのですが、パラスポーツという風に構えるのではなく、一般のスポーツと同じように見てほしいです。パラスポーツも迫力があり、パラスポーツならではの魅力があります。それを皆さんに知ってもらいたいと思っています。

・お二人にお聞きします。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けての意気込みを教えてください。


渡辺選手

 ずばり東京パラリンピックで金メダルを取ること、と言いたいところですが、世界ランクが14位なんです。まだパラリンピックに出られるのが世界的に何人までなのかという枠も公表されていません。その枠に入らなければパラリンピック出られないので、その枠に入ることが一番の目標になっています。皆さん、応援よろしくお願いいたします!

豊田選手

 私も渡辺選手と同じです。パラリンピックの出場枠がまだ決まっていません。14種目あるのですが、上位5,6人しか出られないといわれています。少ない人数の中でまずはパラリンピックに出場すること、その次に金メダルを目指して頑張りたいと思います。もし、パラリンピックに出場することが決まったら皆さんに応援に来てほしいと思うのでその時はぜひ皆さん応援に来てください。頑張ります!

活発な質疑応答のあと、感謝の気持ちとエールを込めて「明日の空へ」が合唱されました。気持ちのこもった合唱に続き、生徒からお礼の言葉が述べられました。

■お礼の言葉


 私たちは普段パラアスリートの人たちに会うことや実際にプレーをみることはほとんどありません。今日、実際にプレーを見せてもらい、テレビを見るよりも圧倒的な迫力でした。世界で戦う人たちの力にとても驚きました。また、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックについて想像を膨らませながら応援することができました。
 今日の講演を聞いて、また実演を見て、観戦する私たちが選手の方から勇気や希望、前向きに生きる力をもらえていると思いました。自分の努力が誰かの力になる。生きるための原動力になる。私たちも誰かに希望を与えられるように頑張りたいと思います。お二人もぜひ、東京パラリンピックに向けて頑張ってください。本日は大変貴重な講演をありがとうございました。

会場が大きな拍手に包まれるなか花束贈呈が行われました。鳴り止まない拍手に見送られて両選手が会場を後にしました。



講演終了後にも関わらず笑顔でインタビューに応じていただきました。

■豊田選手、渡辺選手インタビュー



・若い世代に向けて、こんな風に生きてほしいというメッセージをお願いいたします。




豊田選手


 私はずっと目標を持ちながら生活してきました。皆さんには小さくてもいいので目標だったり、夢だったり、そういうものを持って、その夢や目標に向かってぜひ挑戦してほしいと思います。そういう人生を送ってほしいと思います。



渡辺選手


 自分は正直学生のころは平々凡々な生徒でした。気づいたら、今こうして世界中をバドミントンで飛び回るような生活になったので、何があるか本当にわからないと最近実感しています。その中で、自分のやりたいことを見つけてください。自分はバドミントンが人生の一つの柱になっているので、皆さんも好きなものを一つ見つけて、それに向かって突き進んでいってもらえればと思います。

・東京2020オリンピック・パラリンピックがどういう大会であってほしいと思いますか


豊田選手


 すごく思っていることは東京大会がオリンピックとパラリンピックが一体感のある大会になってほしいということです。オリンピックを見る方は多いですが、パラリンピックを見ていない方もいるように思います。オリンピックもパラリンピックも同じくらい盛り上がってほしいです。パラリンピックも魅力のある競技が多く、圧倒される競技もたくさんあるので、ぜひ世界の皆さんに見てほしいと思います。

渡辺選手


 ほぼ豊田選手と被ってしましますが、オリンピックとパラリンピックの垣根を越えた一体感のある国際的な大会になってほしいと思います。


 笑顔がとても印象的な豊田選手、話術の巧みな渡辺選手、お二人の魅力に引き込まれる講演会でした。また、パラバドミントンの面白さを十二分に教えていただきました。東京2020オリンピック・パラリンピックに向けてお二人の活躍を応援していきたいと思います。


最後になりますが、講演会を取材させてくださった神山校長先生をはじめとする大泉第二中学校の皆様に厚くお礼申し上げます。

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    『心にのこるオリンピック・パラリンピックの読みもの』 別巻
    大野益弘/監修 学校図書 2017
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